石狩市新港会社員強盗殺人事件|重機の強奪とATM襲撃はどこまで計画されていたのか

2005年1月13日、北海道石狩市新港の会社事務所で、新田猛さん(当時56歳)が殺害されているのが見つかった。その少し前、会社から盗まれたショベルローダーがスーパーのATMを襲っていた。犯人はなぜ重機を選び、なぜ新田さんの命まで奪ったのか。残された行動を一つずつ追ってみたい。

1. 事件で何が起きたのか

北海道警察によると、1月13日午前5時52分ごろ、石狩市新港の会社事務所で新田さんが殺害されているのが見つかった。午前4時ごろには、同じ会社から盗まれたショベルローダーでスーパーのATMを狙う事件が起きている。現金は奪われなかった。警察はガストーチ、手袋、長靴を犯人の遺留品として公開している。

2005年1月28日のResponseの記事では、午前4時10分ごろにATMの異常が通報され、重機がパトカーから逃走し、約4キロ先で乗り捨てられたと報じられている。ここで注意したいのは、午前5時52分は新田さんが見つかった時刻であり、殺された時刻ではないという点だ。

2. なぜ、この会社の重機だったのか

事前に目をつけていたのか

ATMを重機で壊すつもりなら、まず重機を手に入れなければならない。どこに置かれているか、動かせる状態なのか、ATMまで運べるのか。犯人は事前に調べていたのだろうか。

重機が盗まれ、ほどなくATMの襲撃に使われたことを考えると、最初からこの会社を狙っていたという見方には筋が通る。だが、たまたま使えそうな重機を見つけた可能性もある。会社を下見したのか、内部の事情を知っていたのか。その答えはまだ分からない。

新田さんとの遭遇は予定外だったのか

当時のResponseは、警察が「重機の鍵を奪うために新田さんを殺害した」とみていたことを伝えている。もしそうなら、犯人にとって新田さんは重機を手に入れるうえでの障害だったことになる。

ただ、最初から人を襲うつもりだったのか。それとも、誰もいないと思って忍び込んだところで新田さんに出会ったのか。この違いは大きい。ATMを狙う計画はあっても、殺人まで計画していたとは限らないからだ。

3. ATM襲撃と吹雪の逃走

Responseによれば、犯人はパトカーに追われるなか、重機を急に後退させたり、バケットに入れた雪で妨害したりしたという。重機を自在に操っていたようにも見えるが、それだけで建設業の経験者だとは言えない。

当日は吹雪だった。犯人は悪天候を見越していたのか、それとも偶然、雪に助けられたのか。重機を約4キロ先に乗り捨てたあと、どこへ向かったのだろう。徒歩で逃げたのか、別の車に乗り換えたのか。逃走の最後の部分が見えない。

4. パトカーのタイヤは誰が傷つけたのか

さらに奇妙なのが、警察車両のタイヤだ。当時の報道では、ATM近くの交番にあったパトカーのタイヤに切り傷があり、追跡中にパンクしたとされる。もし犯人が事前に細工していたなら、警察が動き出すことまで計算していたことになる。

ただし、近くの金融機関に止まっていた一般車両2台にも似た被害があった。警察は別の器物損壊事件だった可能性も考えていたという。タイヤを傷つけた人物がATMの犯人だったのか、仲間だったのか、それとも無関係だったのか。ここは切り離して考えたい。

5. ATM窃盗はどこまで計画されていたのか

仮に、犯人が最初から重機を使ってATMを襲う計画を立てていたとしよう。そう考えると、いくつかの疑問が浮かぶ。

  • 標的:ATMの位置だけでなく、どこを壊せば現金にたどり着けるかまで調べていたのか。
  • 重機:置き場所や鍵のありかを知っていたのか。
  • 新田さん:人がいることを想定していたのか。それとも予想外の遭遇だったのか。
  • 警察:通報から警察が来るまでの時間を考えていたのか。タイヤの傷はその準備だったのか。
  • 逃走:重機を捨てる場所や、その先の移動手段まで決めていたのか。

もし重機が偶然使える状態だったなら、念入りな下見という見方は弱まる。タイヤの傷が別件だったなら、追跡妨害まで準備したという筋書きも崩れる。一つの出来事を説明できるからといって、すべてが同じ計画だったとは限らない。

6. 計画は大胆なのに、なぜ現金を奪えなかったのか

大型の重機を盗み、ATMを壊して金を奪おうとする。発想は大胆だ。ところが、結果は失敗に終わっている。準備はしたものの、実際に現金を取り出す難しさを甘く見ていたのだろうか。それとも、警察の到着が予想より早かったのだろうか。

そもそも、なぜ人を直接脅す強盗ではなく、ATMだったのか。人との対面を避けたかった、という見方もできる。もし犯人が人を傷つけることを避けたい性格だったとしたら、無人の機械を標的にした理由にもなる。だが、その人物が新田さんの命を奪ったとすれば、何が起きたのか。

最初から殺すつもりだったのか。突然出会って暴行に及んだのか。倒れた新田さんを見て、死んだと分かっていたのか。気絶させただけだと思って立ち去ったのか。どの筋書きも、犯人が新田さんと接触した瞬間の出来事によって大きく変わる。

犯人が無職で親と暮らし、遊ぶ金を欲しがっていたという人物像も考えられる。生活費に困っていたのではなく、まとまった金を欲しがったのかもしれない。ただし、これはあくまで一つの人物像だ。仕事や家族、金銭事情につながる手掛かりはまだない。

7. 2010年、札幌で起きた似た事件

2010年3月6日には、札幌市南区で盗難トラックを使ってスーパーのATMを狙った窃盗未遂事件が報じられている。盗んだ大型車両を使うこと、早朝にATMを狙うこと、結局現金を奪えなかったこと。石狩事件を思い出させる点は少なくない。

もし同じ犯人だったらどうだろう。2005年に思いがけず殺人事件を起こしてしまい、しばらく身を潜めた。そして数年後、再び似た方法でATMを狙った――そんな筋書きも考えられる。逆に、単に手口が似ているだけで、別人の犯行だったのかもしれない。

2010年の事件では、追跡を妨げる釘板があったという情報も見られる。ただ、この細部は当時の新聞などで改めて確かめたい。石狩事件のタイヤ損傷と安易に結びつけるべきではない。

白いワゴン車が目撃されたという話や、捜査対象となった車の台数についても情報があるが、詳しい裏付けはまだ足りない。二つの事件を結ぶ鍵があるとすれば、車両の入手方法、逃走の段取り、残された物、そして捜査で得られた痕跡だろう。

8. 犯人はどんな人物だったのか

大胆な計画を立てながら、肝心の現金は奪えない。人のいないATMを狙った一方で、会社では人が殺されている。このちぐはぐさは気になる。

犯人は冷静な計画犯だったのか。それとも、思いついた計画を十分に詰めないまま実行した人物だったのか。重機を扱えることと、犯罪を成功させる能力は別だ。むしろ、犯人の想定から外れた出来事が次々に起きたと考える方が自然なのかもしれない。

事件後、犯人が恐怖から犯行を控えた可能性もある。あるいは別の事件で捕まり、自由に動けなくなっていたのかもしれない。しかし、2005年から2010年まで犯行がなかったと分かっているわけではない。ここも、犯人像を考えるための問いとして残る。

9. 結局、どこまでが計画だったのか

重機を盗んでATMを襲う。その流れには、少なくとも何らかの狙いがあったはずだ。だが、新田さんの殺害も、警察車両のタイヤ損傷も、吹雪のなかでの逃走も、最初から一つの計画に組み込まれていたのだろうか。

この事件で気になるのは、計画的に見える行動と、行き当たりばったりにも見える行動が混ざっていることだ。犯人が何を準備し、何を想定していなかったのか。その境目が分かれば、新田さんが殺された理由にも近づけるかもしれない。

10. 参考資料

資料確認:2026年11月8日。2010年の類似事件や一部の目撃情報については、当時の新聞などとの照合を続ける。